六 水曜日

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六 水曜日

「おにぎりの中身は何が好きですか」 「おにぎりですか? とり五目、かな……いや、とり五目は中身じゃないな、えーと」 「あはは。美味いですよね、とり五目。オムライスとかも好きっすよ、おれ」 「最近はコンビニおにぎりも種類がたくさんあるから迷っちゃいますね……あ」 「どうしました?」  好きなものを聞かれて答えて、というのも一週間続けば慣れたものだ。受領書を受け取り、サインをして返すいつもの流れも話しながらできる。  おにぎりの話題でふと思い出したのは、実家の近くに住む優しい手の女性だった。 「祖母が握ってくれた塩むすび、何年食べてないかな、と思って。泊まりに行くと、朝ごはんによく作ってもらったんですけど」  海苔と夕飯の残りの味噌汁、目玉焼きと塩むすびが祖母の家での朝食の定番メニューだった。  実家と祖母の家はさほど離れておらず、子どもの頃は時々泊まりに行ったものだった。大人になってからは実家にすら滅多に帰らなくなってしまった。特別不仲というわけでもないが、帰る理由もなくてそのままだ。     
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