七 木曜日

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 元々優しげな顔の青年だ。テキパキ働き、元気よく、一生懸命という言葉が似合う。柔らかく笑っただけなのに、こんなにも華やかな雰囲気になるとは思わなかった。  一瞬の動揺は置いておいて、忘れないうちにと受領書と一緒におかかが入っていた瓶を返す。 「これ、お礼にもならないかもしれないですけど」 「えっ、そんなつもりじゃ……あれ? うわ、これ懐かしい!」 「あ、知ってます?」  瓶は洗って、通勤の道すがらにはない、家の近所のスーパーで買った気に入りの飴を詰めた。なぜか一部のスーパーにしかないそれは、小学生の頃に頬を膨らませた大粒の懐かしい味だ。本当はもう少しちゃんとしたものを用意したかったのだが、いかんせん時間がなかった。  若者が何を喜ぶのかがイマイチわからず、都築さんの趣味に合わなくてもお弁当屋さんのおばさま方にウケが良さそうなものを、と思ったのだが、幸いにも都築さんの好みに近かったようだ。瓶を傾けたり回したりして、ぎゅうぎゅうに詰まったカラフルな飴玉をきらきらした目で見ている。 「子どもの頃超好きでした! 夏休みのラジオ体操とか、終わると子ども会のおばさんがくれて……うわー、マジ懐かしー」 「苦手なものとかじゃなくてよかった。安っぽくて申し訳ないんですけど」     
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