八 金曜日

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 多少、偏食気味な気はするが、目立った好き嫌いはなく、特別好きなものも特にない。何が一番かと聞かれると、若干困る。 「都築さんは?」 「おれですか? うーん、お弁当の中だったら甘いのが好きかもですね。だし巻きも好きっすけど、夕飯にできたてを食べたいような」 「確かに」  鼻から抜ける出汁の香りを思い出す。卵焼きを久しく食べてないなと思っていたら、きゅう、と腹が鳴った。うーわー、恥ずかしい。  耳が熱いのを無視して少し乱暴に受領書を返した。都築さんは必死に堪えてるけど、笑いが抑えきれていない。いっそ普通に笑ってくれ。 「腹減りましたね」 「もう十一時過ぎですからね。そろそろお湯も沸かさなきゃいけません」 「すみません、遅くなっちゃって。……板井さん、お茶汲みもするんすか?」  都築さんの配達は、早ければ九時過ぎくらいに来ることもある。今日は特別遅い方だった。  こんな時間に飯の話なんかしたら、腹の虫だって鳴きたくなるというものだ。 「食堂で昼食を摂る人たちの分のお茶汲みは僕がやることが多いです。これでも管理部で一番若いですし」 「へえ。いいなあ、板井さんがいれたお茶」 「別に特別美味しいわけじゃないですよ。ほら、えーと……これ、あげますから! 下で飲み物でも買って、都築さんも仕事戻ってください」 「え? え?」     
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