九 月曜日

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 声に違わず、都築さんの顔は驚愕と悲しみに満ちていた。そんなに絶望するような内容じゃないだろ、どうしたんだ、最近の若者わからん。 「ど、どうしました? 体調悪いですか?」 「……いえ、あの、板井さんはめっちゃカッコいいっす。 ね、草町サン」 「優しいお兄さんって感じです」 「それは、どうも……」  このタイミング、その表情でフォローされても、どう反応したらいいんだ僕は。  助けを求めるように草町くんを見るけど、いつもの顔で見返されるだけだった。いや、何かを思ってくれていたのかもしれないけど、さっきくらいハッキリした顔してくれないとわかんないって。何。何が言いたいんだ、仕事して草町くんの表情筋。 「じゃ、僕は仕事に戻ります」 「あ、うん。お疲れ様」  そっちの仕事じゃない、とツッコミを入れるのは心の中だけだ。引き止めるわけにもいかなくて、真新しい軍手を持って現場へ戻っていく草町くんを見送る。  どうしたものかと思っていると、都築さんが受領書を寄越してくれた。手早く弁当の数を確認してサインする。 「あの」 「はい?」  サインが済んだ受領書に視線を固定して、都築さんが口を開いた。  若干、口が尖っているのは気のせいだろうか。子どもが拗ねているような、若干逸らされた視線にうっすらした不満を感じる。     
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