九 月曜日

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 あ、そういうこと。って、わからんでもないけど、そういうことでいいのか。にっこり笑ってくれてるとこ悪いけど、筋が通ってるようで大分ぶっ飛んでないか。  客先の受付担当にくん付けされないくらいで拗ねんなよ、最近ちょっと話すくらいの男の誕生日とかどうでもいいじゃん。  友達になりましょうって面と向かって言われたの初めてなんですけどっていうか既に友達気分だったよ、すみませんね勘違いしてて。  言いたいことがありすぎて、口ははくはくと空気しか出さない。 「ちょっとプラン考えるんで、食べたいものとか行きたいとことか、考えといてくださいね。じゃ! また明日」  混線する思考回路が復旧する前に、都築さんは颯爽と去っていく。幾度となく見送った背中のはずなのに、今日はやけに決意を秘めているように見えた。  ふと気づけば、食堂に一人ぽつんと取り残されている。この五分ほどのできごとを振り返り、僕は喉から素直な気持ちが漏れてくるのを止められなかった。 「え……ええええ…………?」  僕も歳をとった。若者の心は、複雑怪奇である。
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