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三 金曜日
「弁当のおかずは何が好きですか」
受領書と一緒に渡された質問に、はて、それは誰に対する質問だろうか、と疑問に思う。しかし、今この場にいるのは都築さんと僕の二人だけだった。
食堂は営業部の会議にも使われるけれど、普段は昼休みくらいしか人がいない。いたとしても、管理部のお姉様方がコーヒーを入れに来たとか、営業さんが広い机で作業してるとかでない限りは無人だ。
管理部である僕が知らないわけがない事実に背中を押されて自分への質問だと納得しても、なぜ僕にそれを聞くのか、という疑問がなくなるわけではない。
「えっと、新メニューのアイディアですか?」
「え? あ、いや」
「僕より、管理のお姉様方とか、現場のおじさんたちに聞いた方がいいかもしれませんよ。いつも頼んでくれてる人たちに聞いておきましょうか」
「そうじゃなくてっ」
前のめりで遮られて、都築さんの必死な目に数秒呼吸を忘れた。改めて見れば、本当に顔立ちの整った青年だ。
明るめに染められた髪は柔らかそうだけれど、頸の辺りは刈り上げられている。ツーブロックというヤツだ。
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