十一 水曜日

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十一 水曜日

「カレーは、好きですか」 「は、はい……好き、ですけど」  今まで、こんなにも強ばった都築さんの顔を見たことがあったろうか。いや、ない。  若干顔色が悪い気さえするが、緊張なのか体調不良なのか判断できない。足取りはしっかりしているように見えるから大丈夫、なのだろうか。  仕事中、しかも昼前の配達が一番忙しい時間帯だ。気軽に少し休んでいけとは言えないし、どうしたものだろう。あ、やばい、考えながら受領書にサインしてたら名前が曲がった。 「あ、板井さん。と、都築さんも。こんにちは」 「草町くん」 「こっ、こんちはっ」  都築さんの背後、開け放しのドアから草町くんが顔を見せた。緊張していたところに背後から声がかかって、都築さんが少しビクつく。  終わってからでいいんですけど、と前置いて、草町くんが持っていたボールペンを顔の近くまで持ち上げた。 「ペンの替え芯と、テープの発注書をいただきたいんですが」 「はい。ちょっと待ってくださいね」 「じゃ、じゃあおれはこれで! 失礼します!」 「えっ」     
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