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十二 木曜日
「昨日のカレー、どうでした……?」
今日も今日とて、都築さんは腹が痛そうな顔をしていた。何がどうして、そんな顔をしているのだろう。
都築さんの表情が気になって眺めているうちに、どんどん視線が下がってうつむいていく。しまった、これは即答しないといけないやつだった。
「美味しかったですよ、とても」
「っほ、んとに……? 不味くなかったですか?」
「まずいなんてとんでもない! カレーの、トロトロのジャガイモ大好きです!」
カレーのジャガイモとシチューのニンジンは特別好きだ。本心からの言葉は若干語調が強かったかもしれない。ぽかんとした都築さんの顔に、熱く語るとこ間違えたかと冷や汗をかく。
自己弁護の方向性を脳内でシュミレートしては却下していて、目の前で起こったことを理解するのに時間がかかった。
「っよかったあ……!」
都築さんは快活で、愛想のいい人だ。職場のおばさま方に可愛がられるだろう様子が簡単に想像できる。毎日とはいえ数分の付き合いの僕だって、何度も笑顔を見てきた。
その、はずなのに。
「おれが作ったんです。昨日のカレー。初めて、全部任せてもらえて」
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