十三 金曜日

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 軽くなるまでポットに移し、カップ数杯分は湯が沸くのを待っている間に用意していた急須に注ぐ。 「上の空ですね」 「ん? うーん……そう、かな」  昼休み前のお茶汲みは、普段はもっと作業的でちゃっちゃと終わらせてしまう。それでも今日はなんだか仕事に集中できなくて、ゆっくりと湯が沸くのを待ち、茶を入れた。  都築さんの言葉と、表情が脳裏に焼き付いている。印象的で、衝撃的で、意識して何かに集中しないと、あの時のことばかり考えてしまっていた。  数回瞬きをする間も、草町くんは静かに立っている。待っているのは、お茶か、僕の言葉か。 「相談が、あるんだけど」 「なんでしょう」  お茶を入れた草町くんの湯のみを差し出しながら切り出すと、いつもの調子で声が返ってきた。  どんな突拍子もないこと言っても、草町くんは変わらない反応しそうだな。くるくる表情が変わる都築さんとは対照的だ。外見の印象は真逆に見えても、二人とも懐の深い好青年で、話せばすぐに仲良くなれるだろうと想像できる。  相手の言葉をきちんと受け取って、返す。それすら僕には難しい。一日経った今でも、都築さんの言葉の意味を図りかねていた。赤く染まった頬が、耳が、首筋がチラついて思考を邪魔する。 「草町くんさ……友達、に、好きって言ったこと、ある?」     
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