十三 金曜日

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「ありますよ」 「あるの!?」 「板井さんが聞いたんじゃないですか」  確かにそうだけど、いつものテンションしか知らない僕には草町くんが友達とはしゃいでいるイメージがなかったから驚いた。男同士のふざけ合いとは縁遠く、友達も大人しい子が多そう、と勝手に思っていたのだ。  イメージで人を判断するのはよくない。わかっていても、現実を知れば驚いてしまうのは仕方ないと許してほしい。 「大学の後輩とか、先輩とか……ボクはキミを好きだけどキミもボクを好きだろう? みたいなことをシラフで言える人たちがいたもので」 「すごい大学だね」 「たまたま特別すごい人たちが友人に多くて。僕も聞かれれば答えてましたけど、普通聞かないですよね」  そこで答えちゃう草町くんも十分すごいと思う。と、思っても言わないのは優しさ、でいいのだろうか。  好きだ、なんて、友愛だろうが恋愛だろうがそうそう口にしない。 「好きにも、色々あるじゃないですか」 「うん、まあ、そうだね」 「その感覚、よくわからなかったんです」 「……過去形なのは、意味がある?」 「ある人が、教えてくれました。時間をかけて、僕のペースで理解できるように」     
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