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十四 月曜日
「目玉焼きにかけるのは」
週明け月曜日。いつも通りに質問されたと思ったら、いつも通りではなかった。
視線が合わない。覗き込んだらかわいそうかな、と思ったけど、数秒、じーっと観察してみる。目は合わないけど、見られてるのはわかるんだろう。視線が泳いで、落ち着かなさそうだ。
「醤油ですか、塩ですか、ソースですか」
「オーロラソースが一番好きです」
早口に追加された選択肢に、食い気味で答えた。想定外だったんだろう。驚いた顔が僕に向いて、バチっと目があったまま固定される。
久々に見た都築さんの目は、真っ黒というより少し茶色がかった色をしていた。綺麗な二重まぶただ。案外まつ毛が長そうで、よく見ようと半歩近づいたら二歩逃げられた。残念。
「なんですか」
「いえ、別に」
先週のは、なかったことになったのかなと思って。
いじめになりそうだったから、言いたいことは飲み込んで受領書にサインした。いつも通りにすることを望まれてるなら、そうするだけだ。
「都築さんは?」
「え?」
「目玉焼き」
「……しょうゆ、です」
「よろしい、ならば戦争ダー」
棒読みが過ぎたのか、都築さんが吹き出して笑った。やっぱり、笑うと少し幼い。
つられて笑ったけど、上手く笑えていたかは分からなかった。
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