十八 金曜日

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十八 金曜日

「都築くん、て、呼んでいいかな」 「……え?」  昼休み一時間前の食堂。サインを終えた受領書を返すために手を伸ばして、明日は雨かな、くらいのテンションで許可を求めた。以前、さん付けをいやがったのは彼のはずだけど、ぽかんとしていて返事がない。  ここ一週間くらいの自分の態度を思い返せば、拗ねるわ会話もまともにできないわで散々だったし、何より今更感が半端ない。忘れちゃったならそれでもいいけど、今日の最低限の目標だったから断られるとなると普通にヘコみそうだ。 「だめ?」 「ダメじゃないですっ!」  もう一回検討くらいはしてもらおうと思って聞いてみたら、食い気味で許可が降りた。よかった。第一関門突破だ。  でも、受領書が握り締められてぐしゃぐしゃになってる。大丈夫かな、怒られないだろうか。僕の視線をたどって、手の中の紙切れに気づいた都築くんは、慌てて広げてポケットにしまいこんだ。破れてなければいいのかもしれない。 「ええと、じゃあ都築くん。仕事とは関係ないんだけど、少し時間いいかな」 「……はい」     
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