十八 金曜日

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 ピクリと反応して、都築くんの表情に緊張が走る。背筋を伸ばして、拳を握って、衝撃に耐える準備をしているみたいだ。備えることは大事だと思うけど、そんなに怖がらなくてもいいのに。  昨日、芽生えていた感情とその名前を自覚して、いろいろ考えた。その報告をしたいだけだ。都築くんの言葉への答えというよりは、僕がこれから伝えることに対して答えがほしいなって感じだと思う。  すぐには答えてもらえないかもしれない。最初から自意識過剰な勘違いの可能性もまだある。返事が怖くないと言えば嘘だ。  さて、どこから話したらいいかな。いざとなったらちょっと恥ずかしくなってきた。 「えーと、都築くん。僕はきみを……かわいいと思うよ」 「かわ……」  あ、ちょっとショックな顔だ。慣れてしまうくらいに言われて、嫌な思いもしたんだろう。何より、年頃の男の子だもんな、ど頭からしくじってしまった。かわいい、だけじゃないんだけど、最初の印象は弟みたいだったから、つい。  そういえば、最初は弟みたいとか思ってたなあなんて、過去の自分を他人ごとみたいに思う。ドキドキしてるのを自覚してるから、別人になったようなものかもしれない。 「しっかり者だし、かっこいいなあって思うこともあるけど。驚くと固まったり、好きなものの話をする時に目がきらきらしたり……笑った時はちょっと幼いよね」     
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