十八 金曜日

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「都築くんほどじゃないだろうけど、結構考えたんだよ」  きみの心も、僕が出した答えも、勘違いじゃないって証明したい。さあ、答え合わせをしよう。  いつか握られた左手で、都築くんの右手に触れる。ひんやりして、骨ばってて、若々しい都築くんの手。こんな感じだったんだ。前は、感触を追う余裕なんてなかったから知らなかった。  一つ知ると、もっと知りたいと思う。この手で、どんな風に僕に触れるんだろう。頬は、唇は、どんな感じ? 好奇心とも、知識欲とも違う気がする、都築くんを知りたいっていう感情の名前は。 「都築くん、僕は」 「板井さん」  遮るように名前を呼ばれた。ぎゅうっと握り返された手は、震えてるのを抑えるように強張っている。怖がりだけど、震えてるけど、立ち向かう勇気を持ってる。 「おれに、言わせて。今度こそ、逃げないから」  臆病って言う人も、ヘタレって言う人もいるかもしれないけど、僕は、カッコいいと思う。まっすぐ僕を見る時の目も、僕を呼ぶ声も、結構好きだな、なんて、今更思った。  口を開きかけては閉じて、深呼吸を繰り返す都築くんを眺めていたら、不意に表情筋の勤務態度に多少の問題がある後輩を思い出す。 「あ、そうだ。忘れてた」 「……え?」     
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