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「草町くんから、伝言預かってたんだ。ずいぶん前に」
「草町サン……?」
今じゃなきゃだめ? って、都築くんの顔に書いてある。勇気を振り絞ってるところに水を差すようで、ちょっと申し訳ない気にもなるけど、起爆剤になったら結果オーライだろう。
握った手に、僕も力を込めた。都築くん、僕はもっと、きみの言葉が聞きたい。
「都築くん。がんばれ」
意識してたわけじゃないけど、笑えてたと思う。繋いだ手と、真剣で必死な都築くんの顔に期待してたからかな。バッドエンドにはならないって、それだけ信じられるなら、世の中割となんとかなるだろう。
「板井さんは、ずるいです」
「え、そうかな」
「そうです。ずるいです。大人の男って感じで余裕があって、優しくて。ちゃんとしてるけど、結構適当で。お母さんとか大事に思ってて」
ハッピーエンドを目指してるんだと思ってたけど、結末と途中に試練があるかどうかは別問題らしい。ちょっと怒った顔と声で並べられたのは、とても悪口とは言えないものばかりだった。
あんなに言いよどんでいたのがうそのように、立て板に水とばかりに都築くんの言葉は止まらない。さすがにだんだん恥ずかしくなってきて右手で顔を隠した。
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