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「背はおれのがでかいけど、手は骨っぽくて男の手って感じするし、その割に手首細くてエロいなって思うし」
「ちょ、ちょっと待って」
「待ちません。おれは板井さんが好きです」
時間が止まったみたいな、世界に二人しかいなくなったような気分だった。
意図せず溢れたものじゃない。後悔して撤回も、きっとされない。しっかり手をつないでいるから、ごまかして逃げられることも多分ない。
その言葉が、まっすぐ僕に向けられたものだ実感したら、安心して腰が抜けるかと思った。
正面から見た都築くんは、泣きそうな顔をしている。表情も雰囲気も、全部で感情をぶつけられているようだ。
「板井さんが、好きです」
もう一度、確かめるみたいに渡された心が愛しい。息が苦しいとか、鼻がツンとするとか、そういう前触れは何もなく、心が涙になって溢れたような気がした。頬に触れても涙の跡はなくて、錯覚だったことに驚いたら、今度は笑えてくる。
「都築くん。きみと同じ熱量には程遠いかもしれないし、ぶっちゃけ堂々と隣にいられる自信ないけど」
右手を伸ばして、都築くんの左手を取る。両手をつないで、子どもみたいだ。
都築くんは変わらず頬を染めて、まっすぐ僕を見てた。嫌がってはなさそうだから、半歩近づいた。
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