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四 月曜日
「味噌汁の具は何が好きですか?」
週明け、弁当の箱を置くより先に聞かれて思わず吹き出した。それを見て、都築さんは顔を赤くしていつもよりそっと箱を下ろす。髪の間から赤く染まった耳が見えた。
笑ってしまったことを申し訳なく思いつつ、ここはなかったことにするのが吉と信じて咳払いでごまかした。いつものように受領書を受け取って、サインをしながら好きな味噌汁の具を考えてみる。
「うーん……麩、ですかね」
「…………え? ふ? って、麩? 豆腐とかじゃなくてですか?」
まあ、そういう反応になるよなあ。パチクリ瞬きする都築さんに受領書を返し、一応補足してみる。
「麩ですね。豆腐も好きですけど。子ども頃はよく分からないまま苦手だった気がするんですが、大人になってから食べた時に、あ、美味しいと思って」
「へ、へえ……」
「あーあと、サツマイモとか好きです。ネギもいいけど、タマネギも甘くて美味しいですよね」
「甘いもの、お好きですか?」
「嫌いではないですよ。まあ、味噌汁のサツマイモとタマネギは少し特別感ある気がしますけど……普段はワカメか豆腐か……油揚げとかですかね」
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