第1話 雨降って地固まるならぬ「ケンカして愛固まる」

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第1話 雨降って地固まるならぬ「ケンカして愛固まる」

「最低」  こぼれた言葉に応えてくれる声は無い。いつもなら顔を出す夕日も、今日は雲に遮られて出て来ない。 「最低」  一体どうしてしまったのがろうか。  違う。答えなら分かりきっている。私があそこで少しでも我慢出来ていれば、こんな事にはならなかった。  憧れ、恋い焦がれた彼。人生で初めて、心から好きになった人。  そんな彼は今、どうしているだろうか?  私の事なんか、もう気にして無いのかもしれない。あれだけモテる彼の事だ。他の彼女をつくってるかもしれない。  原因は些細な事だった。  彼が他の女の子と楽しげに話していた。  それだけのことだ。  しかし、それがただの女の子だったらよかった。けど彼女はクラスのマドンナ。容姿端麗で頭脳明晰おまけに気だても良く、私には無い色々な物を持っている。そして、私は彼女が彼の事を好いているのを知っている。  嫉妬という感情が「彼が女の子と楽しげに話していた」という日常に溢れる小さな事柄をヒートアップさせ、大ゲンカにまで発展してしまった。  落ち着いてみると、私がただ一方的に怒鳴り散らしていただけだったが……。  考えれば考える程、私の気持ちは樹上の雲のように暗く、重くなっていく。     
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