第3話 あの人の鼓動は……

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          Sid H  廊下の窓からは灰色のくすんだ雲が空を満たしている。夕日も沈み、唯一の光源である蛍光灯も弱々しい光しか放てていない。その弱々しさは、まるで今の自分の内面を代弁しているのかのようだった。  『心筋異常炎症』  真理の為に付けられた病名。この病名を聞いた時はあまりピンと来なかった。しかし、西野医師からなされた説明は俺の想像を遥かに超えていた。 「元々弱かった心臓の筋肉が過剰な使用により、異常に炎症を起こしている状態です。  今は何とかその炎症を抑える薬を打って繋ぎ止めていますが、恐らくそれも長くは効かないでしょう。  次ぎに倒れたら、その時は覚悟して下さい」  その言葉は俺を絶望の底へ落とすものだった。 「英斗さん。まだ、諦めないで下さい。真理さんが助かる方法があります。臓器提供があれば助かる見込みが出てきます。今私たちもドナーを探している最中ですので諦めないで下さい」  良かった。     
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