第3話 あの人の鼓動は……

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   残り 二十一時間  病室のドアを開けると真理が何やら編み物をしていた。縫い始めたばかりで何を作っているのか見当もつかないがうまい手つきで編んでいく。 「私、死ぬのかな」  唐突に紡がれた言葉は俺に大きな衝撃を与えた。驚いている顔をしている俺を見てクスリと笑うと、隠すのが下手と言う。 「お父さんやお母さんは泣いた後があったし、英斗さんは暗い顔をしてるんだもの。嫌でも気付くよ」 「お父さんたちはなんだかんだ言って何にも教えてくれなかったんだよ。私の事なのにヒドイよね」そう言う彼女は今にもどこか遠くへ言ってしまいそうな表情をしていた。 「心筋異常炎症。これが真理のなっているモノだ」  ただただ目を瞑って聴く彼女は、覚悟を決めたようだ。真理は強い。自分の運命をしっかり聞き、受け止めようとする。 「もともと弱かった心臓に負担がかかり心臓の筋肉が炎症を起こしている状態らしい。医者によれば、次に倒れた時は覚悟をしろ。だそうだ。  そして、ここからが本題なんだが、助かる方法がある」  ハッと目を開けるとその二つの瞳で俺の事を見つめる。 「手術して、臓器を移植すれば助かるそうだ。だから諦めるのはまだ早いぞ」 「じゃあ、これからも英斗さんと一緒にいられるの?」  ズキリと胸に突き刺されるような鋭い痛みを感じたが、それを目の前の彼女に悟られないように必死に笑顔を作り「ああ」頷く。 「手術は明日の十二時にするらしい」 「そうなんだ。……良かった。また、一緒に居られる」 「あぁ」    残り 二十時間三十分
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