第1話 雨降って地固まるならぬ「ケンカして愛固まる」

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「最低」  何度目になるか数えるのも億劫になった言葉。無意識に出てきてしまうそれに、応えたかのようにポツリ、ポツリ、と降る雲の涙。 「泣きたいのはコッチよ」  自然現象に何を言ってもムダだ。そんな当たり前な事でさえ、今のこの気持ちには関係無い。とうとう雨が本降りとなる。それは私の制服を濡らし、容赦なく体温を奪っていく。    俯けていた視線を上げると、目の前を一組のカップルが通り過ぎた。  互いの手の平を重ね、絡め合い、一つの傘に入り、幸せが溢れんばかりの眩しい笑顔をしていた。  その姿が今朝の私たちの姿とダブって見えた。鼻の奥がツンとする。 「本当、最低」 「誰が、どう、最低だって?」  傘と共に私に向けられた言葉。独り言に応えた声音は、ずっと聞きたかった彼の物だった。それは、不機嫌だったが、決して険悪なものではなかった。 「ど……どうして……」 「どうしてもこうしても無いだろ。今にも泣き崩れそうな顔しやがって」  なんで? どうして?  私の中で色んな思いが泡の様に浮かんでは弾けて消える。 「でも、私はあなたを傷つけたのよ」  すると彼は呆れた表情になって、ため息を一つ吐く。     
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