第1話 雨降って地固まるならぬ「ケンカして愛固まる」

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「確かに傷つけられたけど、恋人同士なんだからケンカの一つや二つ、当たり前だろ」  やめろ。やめてくれ。  今の私にそんな言葉をかけるな。お前の事なんか知らない。もう関わらないでくれ。そう冷たくあしらわれる方が今の私にはお似合いだ。  だから、そんな優しい言葉なんてかけるな。  きっと、無様な姿を晒してしまうから。  そして、また私の事を受け入れてくれると期待してしまうから。 「それに、あの時は俺も悪かったしさ。本当にゴメ――」 「やめて」  私の悲痛な叫びは、コンクリートを打つ雨音のみの路地に響き渡った。必死に出した声は掠れて弱々しかった。 「やめて。お願いだから、私に優しい言葉をかけないで」 「嫌だ」  間を開けずに返された拒絶の意思に、思わず口を噤む。 「嫌だ。だって俺はお前の事を愛してるから……」  愛してる。  好きでも、恋してるでもなく、 『愛してる』  そう告げた彼の姿はとても格好良く、眩しく映った。 「重いと思われるかもしれない、引かれるかもしれない。けど、これが俺の本心だから」  そう続ける彼の目は、冗談やからかったり、まして嘘を吐いているとは思えない真剣な光を帯びていた。  視界がぼやける。霞んだ世界で慌ててる彼。格好良かったさっきとのギャップに思わず笑いがこぼれる。     
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