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頬に伝わる水滴はきっと雨だ。
もしそれが涙なら、多分、笑いを噛み殺しているから流れているのだ。
「あのな、こっちは本気なんだぞ」
「だって……さっきとのギャップが凄くて……プッ、ククク」
堪えきれなくなり遂には声を上げて笑った。
「俺だって必死だったんだよ。それを笑うとか……」
徐々に小さくなる彼の言葉は最終的にはゴニョゴニョとしか聞こえなくなってしまったが、恥ずかしい事を言ったのを今更ながら自覚したのか、その顔は熟れたリンゴのように真っ赤になっていた。
私は、そんな彼の隣まで行くとその手を取った。さっきのカップルのように同じ傘に入り、指を絡めた。喧嘩をしても決して離れない様にしっかりと絡み付けて、ギュッと握った。一瞬、驚いた表情を見せたが、彼も握り返してくれた。
「さて、散々泣かされたお詫びに、駅前のカフェでビッグチョコレートパフェを奢ってもらうわよ」
「やだよ。一体いくら奢らせるつもりだよ。せめて、その隣のマックでホットチョコレートパイなら考えないでもないぞ」
「誠意が無いわよ」
「あんだけ心配させたんだ。こっちが奢ってもらいたいくらいだよ」
「あら、女の子に奢らせるなんて、サイテーよ」
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