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第2話 夏の実像
『怪談』
この単語を耳にした時、まず何を思うだろう。
幽霊や妖怪、夏の風物詩、オカルト話。僕はこの手の話はあまり信じないタイプの人間だ。何たって僕は霊感が全くと言っていいほどないのだから。
むしろ、怖いと言ったら幽霊なんかよりも、新聞で取り上げられる殺人事件の方がよっぽど怖い。いや、殺人事件だって身近なところで起きでもしないと本当に怖いなんて思わないだろう。
とにかく、幽霊なんかへっちゃらな僕だが、それは大人になり分別がつくようになったらからで、何も知らない無垢な子ども時代はそんな話を頭っから信じてしまい、その度にガクガクと震えていたものだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、これからお聞かせするのは僕が体験した不思議な話。
怪談と呼ぶには恐ろしくなく、フィクションと呼ぶには作り物らしすぎる、思い出語りを聞いてほしい。そう、あれは僕が小学校五年生の夏休みも終わりが見え始めた頃の話だ。
日本特有の茹だるような暑さは、確実に僕を苦しめる。外で遠慮なく鳴きわめいている蝉の声が余計に鬱陶しく感じる。
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