冷たいよ、律くん

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ずっと、ずっと憧れていた。 煌々と輝くクリスマスツリーを、大好きな人の隣で見る。そんな素敵なクリスマスを。 だから、本当なら今頃『来年も来ような』と甘く囁かれて、うっとりしながら語尾にハートなんか付けて返事をして。重なった瞳のままに優しい口づけを……なんていう、ロマン溢れるデートのはずだったのに。 「木に電気巻いただけで、なんでそんな浮かれられんの?尊敬するよ、むしろ」 通常を遥かに上回る現実主義者な彼の隣で過ごす以上、そんな甘い時間は到底訪れそうにない。 5メートルはありそうな大きな木をカラフルな電飾で着飾った、いわば駅前やらデパートやらでよくありそうな普通のクリスマスツリーだけど、ていうか実際に駅前のツリーなんだけど、それでも私の目を輝かせるには充分だった。 それなのに隣の律(りつ)くんは、私と同じ分量のライトアップを受けているにも関わらず微塵も瞳を輝かさない。 一体なぜだ。彼の目には遮光フィルムでもかかっているのだろうか。 重ねてその一刀両断な物言いだ。なんだか私の密かな夢を一気に砕かれた気もするが、もうすぐ交際開始から1年が経とうとしている私には多少の耐性がある。これくらいのことで挫折したりしないのさ。 「……で、でもさほら!このツリーを一緒に見たカップルは永遠に結ばれるってジンクス、ちょっと素敵だと思わない?!」 「思わない」 「くっ」 「ていうか、木と人工ライトに頼らないと続かないような関係って必要性あるの?」 「考え方が非リア…!!」 真っ向から立ち向かって説き伏せられるとは思っていなかったにしろ、ここまで屈強な価値観を覆すのはどうにもこうにもハードルが高すぎる。
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