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さっきまでの強気さはすっかり吹き付ける北風に飛ばされてしまい、私はがくんと頭を垂れた。
「これいつまでいるの?いい加減寒いんだけど」
「…そんな言い方、しなくても」
マフラーに口元をうずめて、つまらなそうな顔をして。…なんだかこれじゃ、私の浮足立ったテンションに無理やり律くんを巻き込んでいるみたいじゃないか。
ああ、間違ってないのか。本当に、そうなんだ。
「…律くんは、そうまでしても繋ぎ止めたいと思った関係って、ないの?」
「ないよ、そんなの」
「っ…」
悲しいとか、寂しいとか、そんな溢れ出てくるような切実な感情じゃない。…ただ、虚しかった。ぽっかり穴が空いたとか、そんな表現がよく似合う。
すっかり冷えた指先を横切る北風が、もう全然冷たく感じられない。そんなに、冷え切ってしまっていたのか。
「じゃあ律くんは、私との関係に、必要性を感じてないってこと…?」
「…志乃、」
「律くんは、冷静だよね。いつもどんな時も、絶対感情的にならない。」
「…」
「……私が相手じゃ、律くんの感情は動かないのかな」
「……」
「なんで何も、言ってくれないの?……律くんが何考えてるのか、全然分かんないっ…」
「…1回落ち着いて。帰ろう」
「っ、ごめん…私は一緒に、帰れない」
このままじゃ、もっと汚い部分を見せてしまう。…もっと、彼に不必要だと思われてしまう。
目を伏せたままの律くんの横を、北風に逆らって通り抜け、駆け出した。
---律くんは、この冷え切った腕を、掴もうとさえしてくれなかった。
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