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夢。
男は夢を見ていた。
純白の装飾が美しい豪華な部屋。
その中央に敷かれた真紅の絨毯の上で、それ以上に濃い赤で白いドレスを染め上げる花嫁を抱え泣き叫ぶ美しい黒髪の少女。
横たわっている男はそれを後ろからぼうっと眺めている。
部屋も、花嫁も、少女もよく知っている筈なのに、男はそこがどこなのかも彼女達の名前もわからない。
思い出せそうで、何も思い出せない。
そんな、とても悲しく、もどかしい夢。
「…またあの夢か」
男は見慣れた牢屋の中で目を覚ました。
キラキラと朝日が男の顔に射し込んでいる。
少し眩しそうに眉を寄せると体をゆっくりと起こした。
男がいるのは地下牢だ。
しかしその地下牢があるのは空中に浮かぶ島の中。
つまり空の上である。
窓からは朝日を反射して輝く海と、他の島が見えている。
空の上にいくつかの島々があり、固定の場所に浮かんでいる。
それが1つの国のようになっていた。
この男は自分が何故牢屋に入れられているのか、自分が一体何者なのか、何も思い出せないでいる。
気が付けばこの牢屋に来て、もう3年が経っていた。
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