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「おはよう」 「ああ、おはよう」 向かいの牢の青年が男に声をかける。 青年の髪は夢の少女と同じく黒い髪をしている。 牢に入れられてすぐの頃、男はこの地下牢に収められている者達が皆同じ国の出身である事を知った。 ただ1人、男本人を除いて。 他の囚人達は全員が美しい黒髪と赤く輝く瞳を持っているが、男のそれらは透き通る様な青い色をしていた。 囚人達曰く、彼等は「ルガート」と呼ばれる国の住人だったらしい。 「俺達ルガートの民は他の連中がちょっとでも気に食わねぇと思えば即牢屋行きさ」 いつだったか、男はそんな事を聞いた事があった。 そして男は「フィルマ」という国の出身だということも。 「兄ちゃんみたいなフィルマ人がこんな所に捕まるなんてなぁ。あんた、一体何したんだい?」 「人の良さそうな顔をしているのにねぇ」 「フィルマ人の割には僕達ルガート人に優しいしね」 「でも私、あなたの顔をどこかで見た覚えがあるのよねぇ」 「おいおい、このどっからどう見ても優男な兄ちゃんが有名な犯罪者かよ!」 囚人達は口々にそう言って笑う。 他愛のない会話をして、適当に身体を動かし、食事を取り、眠る。 これがこの地下牢での日常だった。
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