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「ねえ、どうやってKAZを射止めたの!?」
「何か秘訣があったんでしょ!?」
黒壁&薄暗い照明のダイニングバーは、そのクールな内装とは対照的に、活気溢れる男女の声で溢れかえる。
華やかな茶髪の美女と、知的な黒髪の美女は、私に喰い入るように尋ねて来た。暗がりでも、やっぱり美人は美人だと分かるものだな、と私は能天気な感想を抱いた。
私の夫、KAZはイケメンだ。
前から見ても、後ろから見ても
トロけるほどイケメンなギタリストだ。
バントマンが音楽で食べて行くのが難しい現代、KAZは一応レコード会社と契約していて、バンド活動を続けている。そこまで有名なバンドな訳ではないけれど、youtubeで注目が集まって、ディープな女性ファンは大勢いた。
そして...私も、そんなファンの1人でした。
月明かりの様な照明が幻想的なライブハウス。甘くトロけるようなライブを終えた、ギタリストのKAZは、突然ファン達の前で結婚宣言をしたのだった。あまりにも唐突な結婚宣言に、湧き上がる観客席。後ろから「いやーーー!」と叫び散らす、黄色いジェラシーの渦に気圧され、手前の席にいた私は、思わず頭のてっぺんまで熱くなるのを感じた。
...そしてライブの後、関係者達が主催するパーティーに、私は呼ばれてしまいました....。私は女性ファン達に取り囲まれてしまったのです。恐ろしい....。
「えーと、どうやって、でしょうねえ」
始めて見る彼のファン達に囲まれて、非常に返事に困る私。
「じゃあ、どこで出会ったの? どうやったの?」
....黒髪美女が食い下がってくる。
そりゃしょうがないよ。だって私の見た目は、決して美人とは言えないし。
地味目なファッション。
決して美人とは言えない奥二重の目と、
形の悪いアゴ。みんなが不思議がるのも無理はないよな.....。と思いつつも正直に答える。
「うーん、共通の知り合いが主催したバーベキューで、かなあ」
「それで、それで!? 詳しく聞かせてよ!!」
「いやあ、私さ、最初に、彼を見て、すぐにキャーーーって叫んじゃったんだよね。まさか憧れのKAZとこんな所で出会えるとは思ってなかったから....。」
私は、当時をゆっくりと思い出しながら、馴れ初めを語り始めた.....。
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