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相手もこちらをみて同じように固まったが、途端に眉間にシワを寄せ、吐き捨てるように呟いた。
「うわ、やべ。会っちまった。男かよ。俺オッパイ大好きなのにクソッ。しかもめっちゃ地味。ホントにΩ?こいつが俺の番とか、ありえない」
「あ……え?う……」
いきなりのことに呆然としていると、男はじろじろと僕を観察し、一方的に喋りまくった。
「出会っちまったもんは仕方がない。お前、発情期まだ来てないだろ、匂いが違うもんな。来たら呼べ。相手してやるよ。運命の相手は最高にイイらしいから楽しみにしてるぜ」
男は互いの携帯にメルアドを登録し、
「それまでは近づくなよ。視界に入ったら、どうしてもガン見しちまう。万がいちにも他のΩに勃たなくなったらやべーからな」
それだけ話すと、用はないとばかりに元にいた集団に戻っていった。
そこにはα達が集っていて、周りにはこれまたΩと分かるグラマラスだったりアイドル似だったりの可愛い子達が取り巻いて、とても煌びやかだった。
いきなりの展開に、僕の頭の中は真っ白になった。しかし、その集団の中に藤代先輩を見つけてハッとなった。
――見られた!
こんなところを見られるなんて!まさか、話は聞こえてないよね。ヒートの相手の予約なんて、聞かれてたら恥ずかしくて死んじゃう!
藤代先輩は、ゼミの合同飲み会で顔を合わせたことのある先輩だが、学年が違うから殆ど会うことはない。その周りをサッと見たが、他に僕の知り合いらしい人はいなかった。
驚いた表情でこっちを見てた藤代先輩にいたたまれなくなって、僕は学食から逃げ出した。
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