話すことの出来ない彼女

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 僕はそれからも図書館に通い詰めていた。それも彼女も同じだった。そしていつの間にか一緒に本を探し、席を同じくして周りに迷惑にならない様に話をした。もっとも彼女の方は筆談である事は言うまでもない。  そして僕らは、ある事がきっかけで急速にお互いを意識し合うようになった。それはクラスの奴が僕にちょっかいをかけた事から始まった。  「おい、亜咲ぃ。昨日俺見てはいけないも見てしまったんだよ」  話しかけてきた奴はニタニタとしながら僕の後ろから話しかけてきた。  「なんだようそれは」  「いやぁ、何ね。昨日ちょっと用事があって図書館の前を通ったんだよ。そしたらお前ら二人仲睦まじそうに図書館から出てくるじゃないか。冨喜摩とよう。俺、目ぇ疑ったぜぇ。あんな声無地味ツンが好きだなんてな」  声無地味ツン。僕は一気に血が頭に上がるのを感じた。  ガダン。もう、その瞬間にそいつをぶん殴っていた。  そいつは僕の胸ぐらをつかみ  「な、何だてめぇやろうってんのか」  そいつの拳が飛んできた。  体が床に倒れ込んだ。  立ち上がりながら  「冨喜摩を好きになって何で悪い。冨喜摩は声無なんかじゃない。俺は彼女の声をいつも訊いている。そんな彼女が俺は好きだ。お前に冨喜摩の気持ちが分かるか」  もう一発ぶん殴ろうとした時、教室のドアが開いた。  「何騒いでいるんだ。早く席に着きなさい」  担任がホームルームの為教室へやってきた。     
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