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手元にあったホワイトボードに「どーぞ」と書き、手を添えて飲み物を勧めてくれた。
「あ、ありがとう」とグラスを取るが、正直目のやり場がない。当の美野里は片足を立て、首に掛けていたタオルでまだ乾ききらない髪を拭いている。
その姿は、健全な高校男子にとってかなりの毒である事は確かな事だ。しかも後ろ髪を拭きながら腕を上げるしぐさをすると着ているティシャツが張り、彼女の胸に現れる突起が、何も付けていないことを証明していた。
ふっと彼女が僕を見て、また何かを書きだした。
「服乾くまで時間あるからここで執筆しましょ」
この状況で執筆するのは酷と言うものだが、選択の余地はなかった。自分の理性が持つことを願うばかりだ。
しかし意外にも、小説を書いていると気がまぎれるものだと感じた。
言い回しの語句に詰まり、見上げた先の本棚の上に辞典があるのを見つけ
「あの辞典借りてもいいかな」と指さし美野里に訊いた。彼女は頷いて返事をしたので立ち上がり本棚の一番上にある辞典を取ろうとした。それと同時に美野里も立ち上がり、僕とぶつかった。そしてバランスを崩し倒れそうになる美野里を抱き抱えた。
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