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僕の体を彼女の柔らかい香りが包み込む。僕の心臓の鼓動が早くなる。それを彼女も感じていた。彼女はスッと体の力を抜き静かに目を閉じた。
柔らかい唇が重なり合う。
静かにそして段々と激しく。
お互いの息遣いが激しさを増す。
段々と頭のなかが真っ白になる。彼女の香りがその肌から香る。
柔らかい、柔らかい。彼女に触れる。とても柔らかくとても暖かい。
彼女の声が漏れる。片言の。
そして激しく一つの光を見つめ合う。
微睡みの中、彼女を優しく引き寄せた。
外はまだ、雨が激しく降っていた。
夏が過ぎ、その余韻を惜しむように秋が深まる。心を刺すような風とは裏腹に、暖かい感情が宿う冬の季節が来た。
もう、この頃にはお互いの家を当たり前の様に行き来する仲になっていた。当然、お互いの親も僕らのことを知っている。僕の姉も、「疎いあんたがねぇ」と言いながらも美野里とは大の仲良しだ。彼女の母親も僕の事をいつも歓迎してくれた。最も、共働きで忙しい彼女の親と合うのはあまり無かったのだが……
美野里はクリスマスのプレゼントにある本を僕にくれた。綺麗にラッピングをしてリボンまで付けてあった。
そして、一枚のメモが添えてある。
「達哉の作家人生に」と一言だけ書き添えてあった。
それは一つの切なく悲しいラブストーリーだった。
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