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「私、北海道に行くの。お父さんの転勤もあって……」
「北海道?どうして、どうして黙っていたの」
「い、言えなかった」
「でも僕ら高校を卒業すれば、大学生だ。そうすれば、そうすれば……」
「ううん、私も北海道の大学に行くの。もう行く大学も決めているの」
「そ、そんな勝手だよ」
「うん、私の勝手。ごめん達哉」
「ご、めん……な……さ……い」
美野里は僕に抱き付き大声で泣いた。声にならない声で、何度も込み上げる嗚咽が彼女を苦しめながら。
葉が擦れあう音がする。いつもの噴水は止まっていた。
彼女を呼ぶクラクションが鳴った。
美野里は僕に一枚のレター封筒を手渡し、彼女を呼ぶ車に向かう。
その時、美野里は一度も振り返らなかった。
美野里を乗せた車は静かに動き出す。成す術がなく、ただ立ち竦む僕を置いて……
亜咲達哉 様
ごめんなさい。今まで黙っていて。
ありがとう、いつも一人だった私と一緒にいてくれて
地味で誰とも関わらない様に生きていた私を、表の舞台に上げてくれた。
話す事の出来ない私を達哉は、こんなにも愛してくれた。
私にとって一生の思い出。
達哉、私もあなたの事を愛しています。達哉に負けないくらい。
私は達哉を愛しています。
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