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「そうねぇ。私が男だったらって良く想う事あるわ。そうしてら絶対沙織を彼女にしてたな。うん、それは間違いない。沙織と初めて会った時、何かこう「ビビビッ」ていう電気みたいなもの走ってさ、あー私はこの人が好きだって直感的に思った。でも、私は正真正銘の女。この体が証明している」
「沙織さんは、ナッキさ……」
「ナッキでいいよ」
「それじゃ、沙織さんはナッキの気持ち知ってるの」
「そ、それは解らない」そう言って少し下を俯く。
そして、自分のグラスに入った水をごくっと一飲みして
「あー私何でこんな事まで話してんだろ。亜咲君って、もしかしたら弁護士になれるかも。だって誘導尋問上手いんだもん」
「ハハハ、そんな事ないよ。僕が目指しているのは小説家」
「それじゃ、誘導尋問の上手い小説家、なんてね」
「それはないなぁ」
二人はお互い何がどうした訳ではないが、笑いあった。
そこへ沙織さんが戻って来て
「あら、随分楽しそうね。何話ていたの」
「あ、いや……」
返事に僕がもたついていると
「いやぁ、沙織の寝顔は可愛いよって」
僕に軽く視線を投げかけ、ナッキは巧くフォローした。
そうだろう。ナッキの想いを当の本人に話すことなんて。しかもこんな場所で、出来る訳がない。
「もう、ナッキったらぁ。私がいない間にそんな事まで、いい加減にしてよ恥ずかしいから」
みるみると顔を赤く染めていった。
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