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「こちらが、お客様のお部屋でございます、どうぞ」
客室の扉を開き、先にお客に入室して頂く。
部屋をぐるりと見渡したお客が、扉の前に正座する私に、視線を向ける。
「本日は、当旅館音羽屋をご利用頂きまして、誠に有難う御座います」
深く一礼して顔を上げる。
「わたくし、当旅館の若女将で御座います…こちらの客室は、客室露天風呂、別館専用露天風呂がございます…先程通りました、通路から本館に通じておりますので、宜しければ本館の大浴場も、ご利用下さいませ…何か、御用が御座いましたら、何なりとお申し付け下さい……では、ごゆっくり…失礼致します」
にっこり微笑み、再度頭を下げ、座ったまま扉を開き、部屋をる。
引き戸を締める際、チラッとお客に視線を向ける。
ビジネススーツを着る男性ふたりの宿泊客。
片や長身で30代位の年齢で、オールバックの出来る感じの男と、中世的な小柄の男性。
私がいなくなって、ふたりの絡む視線が……熱くなる。
このふたり……絶対そうだわ!
私のセンサーが、反応しまくり!
大体、ビジネスマンの男ふたりが、別館に宿泊なんて、それ以外の何者でもない!
ああ……このふたりの、この後の展開を想像するだけで……きゅんきゅんするぅ!
私、音羽 柚乃。
22歳 5人兄弟のど真ん中。
上ふたりの双子の影響で、割と小さい頃から腐女子道を突き進んできた。
自分の恋愛よりも、BLが好き。
誰かに恋して、胸がきゅんきゅんするなんて経験はなく、私が胸を高鳴らせるのは、BOYS LOVEだけ。
それで潤ってるから、全然問題ないの!
自分が誰かに熱烈な恋愛感情抱くなんて、想像出来ない。
興味本位で付き合っても、BL程のときめきを感じない。
そう、ずっと思ってたんだけどな……
初めは、意識なんてしてなかったし、恋になるなんて思わなかった。
恋愛対象外が、恋愛対象に変わったのは……
いつ?
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