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「海くん、お酒呑めますか?」
突然の質問の意図が分からないが、
「呑めます…というか、好きです」
時間がランダムな仕事だから、毎日は呑めないが、お酒は好きだ。
「じゃあ、宅飲みしません?」
「…宅飲み…?」
眩しいほどの笑顔で、
「ちゃんとした歓迎会は、母さんが考えてくれてると思うんです!でも、その前に、ふたりで先にお祝いしましょう!私のお気に入りの定食屋さんが、お持ち帰り出来るお惣菜を売っているんです…外食は次の機会にして……どう、でしょう?」
思ってもいなかった、柚乃さんからの提案に、頬が緩む。
「是非っ!」
俺のことを考えてくれたことが、めちゃくちゃ嬉しい。
「じゃあ、お酒買いましょう!」
明らかに、ケーキの材料より多く買ったお酒と、つまみ。
スーパーから音羽屋へ向かう途中に、柚乃さんのお気に入りの定食屋があった。
「こんばんは!」
「あら?柚乃ちゃん!珍しい時間に来たわね、いっらっしゃい!」
店主らしい女性が、柚乃さんの後ろにいた俺に視線を向ける。
「こんばんは…」
キャップを外し、頭を下げる。
「あら?…あらあらあら!?」
ヤバッ!…気付かれたかな…
そう心配した俺の焦りとは、全然違う言葉が飛び出した。
「もうっ!柚乃ちゃんたら…こんなイケメンどこでつかまえたの?」
にやにやと含み笑いをしながら、そう言った店主に、
「「…えっ!?」」
俺と柚乃さんの声が被る。
「こんな時間にふたりでいて…デートだったの?」
俺としては、店主の勘違いは嬉しいもの……傍から見てそう見えるということが、嬉しい。
でも、
「ち、違いますよっ!彼氏じゃないです!」
力一杯否定する、柚乃さんの言葉に一瞬で沈む気持ち。
…ですよね……
実際違うんだから、そりや全否定しますよね…
「またまたぁ~照れちゃって!」
「照れてません!本当に違うんですっ!…もうっ!…何にします?」
店主から俺に振り向いて、柚乃さんが問う。
「…おすすめで…」
ショック…というのは、言い過ぎかもしれないけど、柚乃さんにとって、俺って…男として意識…されてないのかな…?
そんなことを考えてしまう。
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