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海くんと買い物を済ませ、音羽家に戻り、母屋のキッチンの冷蔵庫にケーキの材料をしまう。
お酒がびっしり入った袋に手を伸ばそうとしたら、
「俺が持ちますよ」
横から大きな手が、袋の取っ手を掴む。
「ありがとうございます!」
状況に応じて、さり気ない気遣いが出来る人は、好ましい。
音羽家の男子は、そういうのに長けている。
世の中の男子が、皆そうだと思っていたら、全然違ってて……
何度も幻滅した。
重い荷物を女の子に持たせずに、すすんで持ってくれる。
小さいこと…のように見えて、それが出来ない男子は、結構多い。
海くんは…それが身に付いてる人なんだ。
それは、買い物の時も感じてた。
スーパーのドアを開けてくれて、ドアを押さえたまま、先に私を店内に入るように促してくれたり、精算前にカートからカゴを出してくれたり…買った荷物の、重い方を持ってくれたり……
やろうと思ってやるんじゃなくて、それが当たり前だと思ってるから、自然に身体が動いてる。
勿論、私を気遣ってくれてるのも分かってる。
物腰は凄く柔らかいけど、男の人として、頼れる人だと思った。
母屋の階段を上がろうと、一段目に脚を掛けようとしたら、
「ゆ、ゆゆゆゆゆ柚乃さんっ!」
大きな声で私の名前に、たくさん『ゆ』を付けて呼ぶ。
「どうしました?」
脚を元の位置に戻し、海くんに振り向く。
「…あのっ…す、すみませんっ!」
いきなり謝った海くんが、徐に自分が着ていたパーカーを脱ぎ、
「…えっ!?」
そのパーカーを私の腰に巻き、袖をきゅっと結ぶ。
…な、何で?
意味が分からず、ただただ海くんを見上げていた。
「と、突然…勝手なことして、すみません…でもっ!…その、ですね…す、スカートが…短過ぎて…その…見…えて…しまう…から…」
スカートが短過ぎて……
見える……?
…あ…!?
そういうことね……
真っ赤な顔した海くんが、私の視線から逃れ、横を向く。
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