私の知らないあなた

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 雪の中に沈むように横たわる優斗はなにも言わなかった。  優斗の長い睫毛についた雪を丁寧にはらう。  目を閉じた優斗の顔は怒っているどころかむしろ微笑んでいた。 「私、戻ってきちゃった」  優斗は目を閉じたまま動かない。 「怒らないの?優斗」  私は優斗の体を動かし、腕枕をしてもらうようなかたちで寄り添い横たわった。 「優斗、不安だったんだよね、怖かったんだよね、でももう安心だよね。私も一緒だよ。いつだったか優斗は教えてくれたよね、私の名前の意味を。言ってくれたよね、私はほんとうはとっても強いんだって。違うよ優斗。私は優斗のためになら強くなれるけど、優斗がいなきゃ駄目なの。優斗なしで一人で強く生きてなんかいきたくない。優斗がいない世界は不安で怖くてどうしようもないの。だから私も一緒に連れて行って。優斗と一緒だったらどんなことでも大丈夫だもん」  優斗の胸に頭をもたせかけ目を閉じる。
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