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子どもは、クラウス・フィツェックと名乗った。
父親に撃たれたのだと言った。
ギルベルトの思った通りだった。
父のことを、恨んではいないようだった。
ただ、混乱していた。
母はいないという。
子どもを連れて逃げるのは、危険だった。
だが、置いていくわけにはいかなかった。
なぜなら、たった今、ギルベルトは、不死の身となったからだ。
己の血をもって、クラウスの命を救ったから。
今後、彼を死なせることができるのは、幼いこの、クラウスだけ。
クラウスに殺してもらわなければ、ギルベルトは、永遠に死ぬことはできない。
戦争の混乱の中、一度離れたら、どこで再会できるか、わかったものではなかった。
ましてや、年端もいかない子どものことである。
もしかしたら、ギルベルトより先に、死んでしまうかもしれない。
そしたら、自分は……。
肉体の衰えとともに、永劫の苦しみを味わうことになる。
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