1 月あかり

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*  ギルベルトの故郷は、ウィスタリアの首都、ウィルンだ。  親兄弟はすでにないが、友人や知人たちがいる。  戦争に負けても、なんとか生きる手立てはあるはずだ。  ウィルンへ帰ろうと思った。  従軍を決意するまで、ギルベルトは、学生だった。  再び、学業を再開したかった。  街道を辿るルートは危険だった。  首都は、陥落している。ウィルンまでの要所要所で、ユートパクス軍が見張りをしていた。  山へ入り、大きく迂回するしか、手はない。  山は峻厳で、道はあるとはいえ、けもの道だ。  子どもにはきつい。  だが、クラウスは、文句ひとつ言わず、ついてきた。  自分のほかに頼れるものがいないのだ。  そのことに気づき、ギルベルトは複雑な気持ちになった。
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