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ギルベルトの故郷は、ウィスタリアの首都、ウィルンだ。
親兄弟はすでにないが、友人や知人たちがいる。
戦争に負けても、なんとか生きる手立てはあるはずだ。
ウィルンへ帰ろうと思った。
従軍を決意するまで、ギルベルトは、学生だった。
再び、学業を再開したかった。
街道を辿るルートは危険だった。
首都は、陥落している。ウィルンまでの要所要所で、ユートパクス軍が見張りをしていた。
山へ入り、大きく迂回するしか、手はない。
山は峻厳で、道はあるとはいえ、けもの道だ。
子どもにはきつい。
だが、クラウスは、文句ひとつ言わず、ついてきた。
自分のほかに頼れるものがいないのだ。
そのことに気づき、ギルベルトは複雑な気持ちになった。
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