1 月あかり

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*  何日かかけて、ギルベルトはクラウスに、ゲシェンクの話を聞かせた。  砂漠の砂が水を吸い込むように、クラウスは、全てを吸収し、理解した。  実際に、自分の身に起こったことだ。  死にかけた体が、蘇生したのだ。  子どもは子どもなりに、いろいろ思い至ることがあったのだろう。  「おじさんは、誰に助けてもらったの?」 尾根に続く細い道を歩きながら、クラウスが尋ねた。 「おじさん?」 ギルベルトはむっとした。 「俺はまだ、19だ……」  死線を超え、逃げることで精いっぱいだった。  髭も沿っていなければ、もう何日も、体を洗うこともしていない。  目立つ軍服は脱ぎ捨て、クラウスの父親の服を失敬してきた。  ……無理ない、のか?  目に悪気のない光を宿し、クラウスが尋ねる。 「おじさんは、その人を、殺したの?」 「……」
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