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何日かかけて、ギルベルトはクラウスに、ゲシェンクの話を聞かせた。
砂漠の砂が水を吸い込むように、クラウスは、全てを吸収し、理解した。
実際に、自分の身に起こったことだ。
死にかけた体が、蘇生したのだ。
子どもは子どもなりに、いろいろ思い至ることがあったのだろう。
「おじさんは、誰に助けてもらったの?」
尾根に続く細い道を歩きながら、クラウスが尋ねた。
「おじさん?」
ギルベルトはむっとした。
「俺はまだ、19だ……」
死線を超え、逃げることで精いっぱいだった。
髭も沿っていなければ、もう何日も、体を洗うこともしていない。
目立つ軍服は脱ぎ捨て、クラウスの父親の服を失敬してきた。
……無理ない、のか?
目に悪気のない光を宿し、クラウスが尋ねる。
「おじさんは、その人を、殺したの?」
「……」
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