1 月あかり

2/26
前へ
/469ページ
次へ
** (Alter : Klaus 17 / Gilbert 29) -- クラウス17歳 ギルベルト29歳 --  悲鳴が聞こえた。  長く尾を引く、悲痛な叫び。  ギルベルトは、読んでいた本を放り出した。  居心地のいい暖炉のある部屋を出、階段を駆け上がる。  悲鳴は、二階の一番奥の部屋から聞こえてくる。  「クラウス!」  ドアを開けると、悲鳴は、一層、大きくなった。  クラウスは、部屋の隅のベッドにいた。  毛布は跳ねのけられていた。  胎児のように体を丸め、がたがた震えている。  ほのかな月明かりの中、目を、しっかりと閉じているのがわかった。 「クラウス……」 ギルベルトは静かに、ベッドに近寄った。 「また、発作が出たか。かわいそうに……」  その肩に、そっと手をかけた。  びくりと、クラウスの体が震えた。  激しい勢いで手が伸び、ギルベルトの手を払いのけようとする。 「クラウス。俺だよ」 耳元でささやく。  クラウスが低く唸った。  悪夢を見ているのだ。
/469ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加