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あの日、初めて座ったあなたの助手席で私は静かになってしまう不安ばかりで、いつもよりお喋りなあなたに助けられた。
行き先は お楽しみということで、これからの計画を話すでもなく、
好きなアーティスト
好きな食べ物
好きな漫画
たくさんの好きを並べながらそれが膨らむことにほっとして、流れる時間に目もいかずに互いの好きを並べ続けた。
気がつくと、景色は どこまでもどこまでも海で、すごく嬉しくなって少し悲しくなった。
そこに広がる海が、空が、青じゃなかったから。
少しくらい青じゃなくても、海を見せてくれたのが嬉しいのよ、そう言いたかったけど、
「…海、冷たそうだね」
寂しそうに笑うあなたに、私は頷くしか出来なかった。
どこまでもどこまでも続く、その色を誤魔化すように、話しに夢中になったふりをして、はしゃいだふりをして。
目につく看板を見つけては、名物料理があるよと知らせてみたりして。
うん、うん、と明るい声を出すあなたを安心させたかった。
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