0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな二人を助けてくれたのは、道すがらにあった水族館で。
良かった
そう思ったのは私だけだと、すぐに気づいた。
カーナビの目的地が、今いる場所を教えてくれたから。
偶然に助けられたと思っていた場所が、目的地だった。
私は、さっきよりも嬉しくて、悲しいは一つもなくなった。
二人でゲートをくぐり、望んでいた青で埋め尽くされる頃には手を繋いでいた。
少しひんやりする そこで、次の青へと進む度に 胸が鳴る。
平気なふりをして繋いだ手が汗ばんでいくのが恥ずかしくて、握る力が不自然じゃないかとか、好きなはずの場所で、好きなものを見ることを忘れた。
手のひらから温度が混ざりあっていくにつれ、だんだんうつ向いてしまう。
「綺麗だね」
って話しかけてくれるのに、どれを指しているのかわからなくて。
そんな時、
「ぅわあーーー!!」
突然、ぎゅうっと手を握る力が強くなって、何がなんだかわからず振り向くと
力いっぱい背を伸ばして、後ろに倒れそうなあなたがいた。
ガラスの向こうに、突然現れたアザラシが、いたずらに彼の視界いっぱいを埋めて消えていく。
「びっくりしたー!」
私は笑った。
言わなくてもわかるよ。
どういう風に驚いたのか、一生懸命話すあなたに、おなかを抱えて笑った。そんな私を見て彼もおなかを抱えて笑う。
涙を滲ませ苦しいという顔。
今日、初めて見たあなたの顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!