まあるい風

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あの日、あなたが見せてくれものは、全て私が「好き」だと言ったものだった。 「好き」を並べては膨らむことに ほっとするだけだった私。 あなたは、その「好き」を全部拾ってくれていた。 手にしているページには、あの日の記憶は一枚もない。空いてるスペースをもどかしく指で撫でるだけ。 この柔らかな居場所で、新しいあなたに毎日会うことが出来るのに、私はワガママにも願ってしまう。 もしも願いが叶うなら あの日のあなたに言いたいことがある サプライズで海は無しだよ、だって裸で泳げないもの。 空が青くなくて良かったんだよ。 たとえ泳げたとしても、あなたの前で水着になるのは恥ずかしすぎたもの。 海が青くなくて良かったんだよ。 だって「好き」がいっぱい詰まっている水族館で、あなたと手を繋いで歩けたから。 私の「好き」を、ちゃんと覚えていてくれてありがとう。 あの日、私はあなたを「大好き」になったよ。
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