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「長沢さんはしないの?」
「私?私はしないよ。というよりできないと言う方が正しいかな……」
少し顔が曇った波留を翔真は見逃さなかった。
「なんで?」
静かに問いかけた翔真に、波留は少し寂しそうに笑いながら、
「お母さんに嫌われるから……」
「嫌われる?」
翔真の声が少し低くなったことに、慌てて波留は、
「あっ、そんな深刻なことじゃないから。うちのお母さん私があまり派手な事とかすると、嫌な顔するの。口癖は、「うちは由緒ある家柄なのよ」って人なの」
少し困ったように笑った波留に、「そっか」とそれだけ翔真は答えた。
「でもね、夏祭りは楽しみなんだ」
「夏祭り?」
「うん、8月の初めにお祭りがあるの。観光客の人も大勢来て花火もあがるし……楽しみなんだ。あっ、片桐君は夏休みは東京に帰っちゃうの?」
「いや、帰らないよ」
「そっか、じゃあ一緒に夏祭りに行けるね!」
無邪気に言ってしまった言葉に、波留はハッとした。
(しまった……これじゃあ一緒に行きたいって言っている様なものじゃない)
「あっ……えっと……」
翔真の顔を見ることができずに、言葉を濁していると、
「うん、一緒に行こう。案内して」
優しく言われた翔真の言葉に波留は嬉しくなり、ニコリと笑顔を向けた。
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