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ひとしきり遊んだあと、またいつもの分かれ道で、翔真と波留は京平達と別れた。
「あー楽しかった!」
腕を伸ばしてゆっくりと海に目をやると、茜色に染まっていた。
「茜色の海だな」
少し前を歩く翔真の声に波留は嬉しそうに「うん!」と頷いた。
「長沢さん、もう少し時間大丈夫?」
翔真の言葉に波留の胸はドキンと音を立てた。
「うん。大丈夫」
少し語尾が小さくなった気がしたが、その事には特に翔真が触れることはなく、ゆっくりと振り返った。
夕日を浴びた翔真の優しい微笑みに、波留は今まで感じたことのない胸の高鳴りを感じて、頬が赤くなるのを感じた。
(夕日のせいだっておもってくれるよね)
波留はそっとその気持ちを心の中で大切にしまうと、翔真に笑顔を向けた。
「海を見て行こう?」
「うん!」
「また、魚の名前教えて」
「たくさん見られるといいね」
ふたりはいつもの漁港の堤防に座ると、足をブラブラ指せばがら海を覗いた。
「あっ、あれはベラだよ」
「ああ、あの色が奇麗なの?」
「うん……」
ふと会話が途切れて、翔真はゆっくりと遠くの島を眺めていた。
そして、
「こんな夏が永遠に続けばいいな……」
小さく呟いた翔真の声に、波留も小さく頷いた。
あなたに出会わせたくれたこの夏が永遠に……。
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