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「波留!」
その声でゆっくりと目を開けた。
(あれ?眠ってたのかな?)
そんな事を思いながら、手を動かしてみた。
(あ……動く)
心底ほっとして、生きているんだと実感した。
まだぼんやりとしたまま、目線を送ると、泣きそうな唯子の顔が見えた。
「ゆいこ……私?」
そこまで言って、波留は唯子の隣に京平と、片桐の姿を目で捉えた。
「みんなどうしたの?」
「あんた、私たちの目の前で……」
そこまで言って泣き出した唯子の言葉を続けるように、京平が言葉を発した。
「車に跳ねられたんだよ。覚えてるか?」
(ああ……なんとなく覚えている様な。一瞬激しい痛みがあって後はもう……)
「なんとなくかな」
答えになっていない様な気もするが、体がまだだるい。
「もう!本当にアイツサイテーだよね!よそ見して突っ込んでくるなんて!」
怒りが収まらないように言った唯子に、京平も「本当だよ。ボンボンが!」と怒りを露わにしていた。
ひとしきり怒った所で、
「おばさん呼んでくるよ。もう少し眠ってな」
と京平は声を掛けて、唯子と病室から出て行った。
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