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「波留!気が付いたの!」
その声とともに病室に入ってきたのは、波留の父の正幸と、母の多恵だった。
「渚は?」
波留はいない弟の所在をただ聞いただけだったが、
「渚は勉強するように言ってあるわ。あなたはいつ目が覚めるかわからなかったんだから」
母の当たり前のように言った言葉に、ため息が漏れた。
「そう」
言い返す元気もなくそっけなく答えた波留に、
「渚も心配していたぞ」
父の言葉に、「大丈夫って伝えて」それだけを言って波留は父を見た。
そこへ、バタバタという音ともに、一人の初老の男性と、20代後半の若い男が入ってきた。
「目が覚めたって?ほら、裕司!お前からもきちんとお詫びしなさい!」
「すみませんでした」
本当の謝罪でない事は明らかだったし、不貞腐れて言わされているその人を見て、波留は正直どうでもいい気分になっていた。
(まだ起きたばかりだし、こんな所まで来ないでほしいな……)
本音を言えば、まだぼんやりするし、たぶん事故でけがをしたのだろう、腹部も痛い波留は、話すことも嫌だった。
もういいですと言葉を発しようとしたのを、先に言葉を発したの母だった。
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